女の私がストリップショーに行ってきた話
少なくとも、台湾やシンガポールに行った時より違う国に来たような感じがした。
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大学も近く、いつも遊んでいる渋谷の一角にストリップ劇場があった。
一般料金は5000円だけど、学生と女性は2000円になるというリーズナブルな値段に、入ってみようかとなった。私は、もちろん女だから学生証を見せることなく2000円になった。けど、一緒に入った法政大学の男友達は学生証を見せたところ、法政大学は出禁になっていて彼は一般料金でしか入れないと言われた。
私「どうして出禁なんですか。」
受付のおじさん「お客さんと問題を起こしちゃったんだよね。ストリップは映画を見るように鑑賞するものだからね。」
私「なるほど、出禁ってすごいですね。」
受付のおじさん「ちなみに8大学が出禁になってるよ、どこかは言えないけど。」
8大学も出禁になってるって......。
渋谷に近いし、東大も出禁の可能性高いと思った。女だから確認されなくて良かったけど。
仕方が無いから、二人で3500円ずつ払って中に入ってみた。
なんとなく想像していた洋画に出てきそうなストリップ劇場とは違って、どちらかというと下北沢にありそうな小劇場という感じ。舞台の真ん中が飛び出ていて、いちばんの見せ場の時にその飛び出たところの床が上がるようになっていた。
お客さんの層は、若い女の人が1人いる以外は十数人のおじさんしかいなかった。日本語が話せない中国人もいた。
入る前に出禁と聞いて、少し危ない感じのところかと想像していたが、全然雰囲気のいいところ。ショーの後にストリッパーの女の子達と写真を撮ろう(一枚500円)と勇気を出して並んだ時なんかは、前に並んでいたおじさんに
「初めて?仕組みわかる?」
と話しかけられ、いろいろ教えてくれた。
ちなみに、写真は女の子単体で撮ってもいいし、ツーショットも撮れる。ポーズも指定できて、いいスーツを着た真面目そうなおじさんが性癖丸出しのポーズの注文をした時なんかは、友達と顔を見合わせて苦笑いしてしまった。まあ確かにそういうところだから当たり前なんだけど。
私なんかは勇気がなかったから
「お任せにします!」
と言ったら、女の子はセクシーな衣装を着たままでツーショットを撮ってもらった。
写真を撮る時、とても優しく話しかけてくれたのに
「初めてのストリップはどうだった?」
という問いに、全く語彙力のかけらもない
「え、えっと、す、すごかったです!感動しました!」
という返答をしてしまった。そしたら、
「そっかー、ありがとう。じゃあ、家で練習してみてね。」
と言われた。よし、練習するか。
全部で約3時間、6人のストリッパーの女の子たちがそれぞれ全然違う雰囲気を纏ってショーを魅せてくれた。
女の子は最初から脱いでいるわけではなくて、結構長い間ダンスをした後に、少しずつ脱いでいき、メインの魅せる場面で舞台の飛び出しているところ、すなわち一番前のお客さんが触れるくらいのところで、裸がよく見えるようなポーズをしたり、広げたりしながら、回転していく。
ストリップと聞いて、多くの人がどんなものを想像するのかわからない。けれど、女の人が裸になってそれを魅せるということにどのような感想を持つのかは人それぞれだろう。
足を踏み入れるまえ、ストリップショーを見たことがあると言っていた人に、
「美しいよ。俺、泣きそうになった。」
と言われ、そんなこともあるのかと思っていた。けれど、私も序盤の方に泣きそうになってしまった。なんで泣きそうになったかと言われると言語化するのは難しいけれど、なんだか、一番初めに出てきた、すごい可愛いわけでもなくてすごい踊りが上手いわけでもなくてすごいスタイルがいいわけでもないメイクの濃い女の子が(胸は大きくてとても綺麗)私の目の前で魅せた裸の隅々に動揺してしまったのかもしれない。確かに綺麗だった。彼女の体が、女の人の中で特別綺麗な体とかそういうことではないかもしれない。
だけど、床が上がって回転している上で、全てを晒すその姿にこんな世界があるんだと衝撃を受けた。台湾やシンガポールやマレーシアやアメリカやオーストラリアへと海を越えて行った時よりも、世界の広さを、私は、目の当たりにした。
動画などでは見切れない、目の前で見ることでしか味わえない気分だと思う。
6人の女の子はみんな全員違う雰囲気のショーで具体的にいうと、
一人目:失恋のストーリー仕立て
二人目: スタイル抜群の美人で人気者
三人目:ど新人、まだ慣れていない感じで愛されキャラ
四人目:洋楽ロックって感じのクール系
五人目:スピリチュアル系、自然派
六人目:アイドル、元気系
もちろん、雰囲気だけじゃなくて体の形もそれぞれ全然違ったけれどどれも綺麗だったし、見入ってしまった。私なんて女だけれど、「へえ、こうなっているんだー」と感心してしまう部分もあった。
確かに、表ではなく裏の世界かもしれないけれどこんな近くにそしてこんな簡単に入ることができる、今まで知らなかった世界があった。
一体どんな気持ちで彼女たちは裸を魅せているのだろう。私は、人生に意味なんかないと言いながら、善く生きようとすることに意味はあるのかとか言いながら、だからといって舞台の上で裸を晒すことはできない。情けないと思ってしまった。彼女たちが、どのようなことを考えているか考えた時、私は想像力に限界を感じた。
ストリップショーに行ってよかったと思った。